09 August

■ 逆境ウイン

⇒本題:愛馬を訪ねて百里行 to 新潟 vol.5

 7/30新潟6R。昨春のミッドウェイファーム見学ツアー以来の対面であり競馬モードのウインアンセムとの初顔合わせはこちらが仮想していた思惑とは180度異なる形で始まった。奇しくもアンセムの収まった枠は1枠1番。新潟競馬場のオッズ掲示板の脇に設けられた、パドックへと進入する通路から一番最初に現れるであろう馬は、大よそまともに舵を取れる状態になく、頭の天辺から喉の裏側までも見せながらロデオのように頭を上下に振り振り尻っぱねでもしながら入ってくるものだとばかり思っていた。

「大丈夫。あれは気合いの表れなんだよ」

 遠路遥々訪れた自らの心を平常に保つためにそれを誤魔化すセリフさえ事前に用意してもいた。しかし実際目にした愛馬はこれだけの人間に囲まれるのが初めての体験にも関わらず他の経験馬17頭のどの馬よりもおとなしかった。"大人しい"よりも"音無しい"という変換がマッチするほど気配がなかった。まさに借りてきた猫、いや、見知らぬ人々の輪の中に放り込まれた時の私のように。あの、目に入る物(者)すべてに今にも噛み付かんばかりの威圧感を放っていた1年半前のギラギラした獰猛さは大事な大事な2つの宝物と一緒にどこかに置き忘れてしまったかのようだった。実際そうだったのかもしれない。

 そして気掛かりだったのは体調面だけではなかった。我々はこのスペシャルウィーク産駒の前脚に注目していた。


『古くからある左前の腫れは入厩当初と比べて半分ぐらいにへっこんでるし、右の腫れなんかは、もうスッキリしちゃったもんだよ。』
by ウインアンセム 7/29調教メールより抜粋

 本当に走れる状態にあるのかどうか、腫れ具合がわかるというならそれをこの目で確認してやろうとの目論見だった。だがアンセムの両前脚にはやや深みがかった緑色のバンテージがしっかりと巻かれていた。いや、バンテージというよりも内側の腱の部分を確実に保護するために、プラスチックかカーボンのような何らかの素材で患部を腱に沿って縦長に覆う補強の目的も兼ねたプロテクターのようにさえ見受けられた。

「あんなの見たことないぞ・・・」

オッズ板
オッズ板
いよいよ真打ちの登場

パドック
パドック

パドック
こんなに静かな馬だったっけ?


 待ち焦がれた愛馬への期待と拠りどころのない不安。

 未出走ということは100%プラス思考で言い換えれば、負け知らずということ。レース経験のある他馬はすでに敗戦を繰り返している経歴をそれぞれが持っていた。それも大敗続きの馬が半数以上を占めている。

「あわよくば勝てるんじゃないか」

 血統面から見ても掟破りと言わざるを得ない新潟芝1000m、いわゆる"直千"への挑戦、そしてコース追いができない、目一杯に追えないという調教での圧倒的なマイナス点。しかしそれらを差し引いても、出たら何とかなるかも、という希望的観測が漲っていた。まるでレースが近づくにつれて買った馬券が自分の中で(だけ)確勝に違いないとの慢心が徐々に深くなっていくように、デビュー戦勝ちの野望は刻々と膨らんでいっていた。

 しかし、積み重ねた根拠のない自信は自身の猜疑心によりあっさりと掻き消されることになる。

「あの落ち着きが去勢した効果なんだ」
「万が一に備えて過剰にケアしているに過ぎないんだ」

 "現実"に直面し動揺を隠しきれない心を、もはや虚勢を張ることで払拭するしかなかった。パドックを周回する愛馬に温かい視線を送りながらも、過去の幾多のレースで目にしてきた着順「−」というイヤなイメージだけが思い浮かんでは次々と通り過ぎていく。

「無事に完走だけはしてくれ」

 結局それはアンセムが故障でどんな大志をも抱けなかった状態のときに切に願っていたものと同レベルに落着していた。こんな怪我をしてしまったのだからひとまずデビューさえしてくれればよい、とだけ。


 地下馬道を経て本馬場に姿を現した出走馬。塚田騎手ともどもコンビの両方がどこかよそよそしく、内ラチぴったりに寄り添ったまま他馬の邪魔をしないようにと遠慮をしているようにも見える。さて、見どころはまともな返し馬ができるのかどうかだった。近くに漂っていた馬がアンセムの先を越していき周りに障害がないことを確認すると、いよいよアンセムも動き出した。手綱から伝わる塚田騎手の合図に応え、一完歩ずつ歩幅を大きくしていく。慣らし運転はほんの軽いもので筋肉の躍動感もそれほど伝わってくるわけではない。しかし"初めての芝"を気持ちよさそうに助走していたのは確かだった。

本馬場入場
本馬場入場

 揺れるこちらの心理をよそに、発走の時間は刻一刻と迫ってきていた。単勝オッズはパドック入り前には21倍を前後していたものがなんと43倍にまでも高騰している。出資馬というフィルターを外した市場期待値の急激な下落、それが何よりもこの日のアンセムの出来を物語っていたように思う。

出走表
出走表

 時は来た。普段はグリーンチャンネルを通してしか耳にすることのない冗長な新潟平場のファンファーレが流れる中、アンセムはどの馬よりも早くゲートへと促がされていく。あのパドックの状態からしてゲート入りを嫌がり突如暴れるような情景は思い描けなかった。ゲート試験を一発で受かった理由も肯けるほどすんなりと、そして大人しく精神を圧迫する初めての"個室"に収まっている。

 全馬枠入り完了、ガッシャンとゲートが開いた。坂のないコースの1km先は肉眼でギリギリ見えるかどうかというとても際どい位置にある。我々3人は方や直接、方やターフビジョンで、そして私はファインダー越しにアンセムの発馬の様子を窺っていた。

「お、ちゃんと出た!」

 直千での出遅れはそれだけで致命的。まずは第一関門クリアと無難な立ち上がりにほっと胸を撫で下ろす。しかし次の瞬間、我々はそれぞれの両の眼を疑う不自然な光景を目の当たりにする。順調なスタートをきってさあこれからというアンセムの姿が突然隣の馬に比べて極端に小さくなったのだ。

「あぁっ!!」

 まるでバックトラッシュでもしたかのように後方に下がったアンセム。故障か!との思いも頭を過ぎったが、前を行く他馬に視界を遮られ確認し辛いとはいうものの、何事もなく駆け続けているようにも見える。「なんだなんだ?ただテンの速さに付いていけなかっただけなのか?」とゴール前で不可思議に言い合っている間にもレースは進み、新潟直千の鉄則・外ラチキープを目標に内枠の人気馬が問答無用に幅寄せを開始していた。すでにターフビジョン上にもアンセムの姿はほとんど映らない。

 あの分でいくと相当差が離れてしまっているなぁと私はとりあえずレースのV写真を撮っておくため、見えない愛馬からターゲットを変え馬群の先頭にカメラを向けていた。アンセムを撮るためにはまだまだ十分な時間が残っているように思えたからだ。しかし勝ち馬と上位入線馬が通過してすぐ隣から叫び声が耳に飛び込んでくる。

「来たぞ来たぞ来たぞ!!!」

 私の予測より全然早くにアンセムは我々の元にやってきた(失礼)。それも写真を撮るにしては絶好とも言える広い馬場の中央をただ一騎で疾走している。「直線コースの内枠じゃ他馬が邪魔でうまく撮れないよ」と苦言を洩らしていた専属カメラマンもこれでは何も文句を言えない。迫るシャッターチャンスに焦りまくりながらもアングルを切り替え、フォーカスを合わせ連写した。結果は神のみぞ知る・・・

独走
独走
この画に付けるタイトルはやっぱりこれしかない

クールダウン
クールダウンクールダウン
脚元が大丈夫そうだったのが何より


 出走18頭中18着。走破タイム0.58.5、上がり3ハロン34.0、勝ち馬との着差3.0秒。これがウインアンセムが残したデビュー戦の記録になる。他のアンセムの出資者の方々には申し訳ないが、初めて出資した馬が故障を抱えながらも一応入線を果たしたという事実は私にとってはショッキングな事由とはならなかった。鬼門とされた最内枠も勝つためには不利なことしかない最低なハンデだったが、皮肉にも何事もなく穏便に初出走の"儀式"を終えるという意味では他馬に進路を妨げられることも接触の危険に曝されることもない最適な条件だったように思う。陣営の手腕を信じてこの経験を次に活かせるのなら、今はあえて不満は口にしまい。

 著作権法上転載することはできないが、翌週の競馬ブック・レース結果欄に載せられたゴール前の白黒写真にて。勝ち馬以下が眼前を通り過ぎているにも関わらず、それにはまるで見向きもせずただただ後ろの動向だけを気にして背伸びしながら待っている3人と1台の望遠カメラが妙に微笑ましかったものだである。

着順表示板
1番がない!
1番がない・・・


 初めて出資した馬は、気性難だった。トレセンに見学に行った日は風邪を引いて調教を休んでいた。そして脚を痛め、去勢手術もされた。こうして七転八倒を経て挑んだデビュー戦が最下位というここまでのプロセス。もう上にあがるしか進むべき道はない。アンセムの戦いはまだ始まったばかりだ(よね?)。


おまけ
馬群の隙間からかすかに見えるアンセム
馬群の隙間からかすかに見えるアンセム

勝ったのはフラワーレインボー
実は狙って当てにいった馬券も外れ・・・

23:59:00 | guippo | No comments | TrackBacks

30 July

■ ウインアンセム 初出走速報

ウインアンセム 直千でただ一騎独走
ウインアンセム 直千でただ一騎独走

 本日の新潟6R 3歳未勝利 芝1000m戦に出走した愛馬・ウインアンセムの滑走シーン。トリミング(画像の切り抜き)なしでここまで撮れるとは、紛れもなく私の写真ライフにおいて過去最高の出来映えだった。ひとまず速報でお伝えしておく。

 ん?結果?? そんな恐れ多いこと、私の口からはとてもとても・・・いずれ日記で。前夜発の新潟日帰りは無理がある・・・ウ〜ン。

23:51:10 | guippo | No comments | TrackBacks

27 July

■ ウインアンセム デビュー決定

 思えばこの場面のためにデジタル一眼レフ買ったんだよなぁ・・・当初は。すでに丸2年が経ち買い替えまでなされて・・・愛馬、オーナーともに回り道を繰り返しようやくゲートに辿り着いたってわけ。シミジミ

 カーリアンの肌にスペシャルウィークの仔が1000m!? 未来の障害王の印す蹄跡の第一歩としてこれも真摯に受け入れまっしょい。フルゲートでもゴチャつかない展開を所望。新潟・・・暑いんだろうなぁ。行きたくないなぁ・・・あぁ肌が疼く。


※ 下記はウインレーシングクラブ発信の近況情報です。転載を禁止します。
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ウインアンセム

7/30(土) 新潟 6R 3歳未勝利 芝 1000 塚田 祥雄 C(除外回数)

フルゲート18頭のところに22頭が出走予定。初出走となるウインアンセムはCで、優先順位は2番目ですので、除外の心配なく出走出来そうな状況です。

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23:59:00 | guippo | 110 comments | TrackBacks

21 July

■ ヤマニンプレアデス いよいよデビュー

ヤマニンプレアデス 当歳時のグイッポシーン
ヤマニンプレアデス当歳時

 あれから丸2年の歳月が流れようとしている。我々が北海道牧場巡りの一環として大挙、錦岡牧場に押し寄せたときからのことになる。ヤマニンパラダイスとヤマニングローバルの見学に赴いたところ、パラダイスの02(現ヤマニンアリエル)とこのパラダイスの03(現ヤマニンプレアデス)にご対面したのだった。

 放牧場に放たれた1歳馬の中で馬群の先頭に立ち力強い駆けっぷりで真っ先に我々の元に駆け寄ってきたアリエルだったが、ここまではその秘めたる能力を発揮するのにやや苦労している節がある。それに対してプレアデスは当時、まだ離乳前で母パラダイスと母仔仲良く寄り添っていた。

このままもらってこっかの図
このままもらってこっかの図

「これ、最後のサンデーだし牡だから1億くらいするんだよなぁ」

 そんな当時の会話がまだ耳に残っている。あの小っちゃかった仔馬がいったいどんなファイトを見せてくれることか。とても懇意な対応をしていただいた牧場のスタッフの方には今でも感謝の念が尽きない。彼らの笑顔のためにも懸命な走りを見せてもらいたいと思う。日曜函館新馬戦から目が離せない。まあ他人のPO馬なんだけど。


北海道牧場巡り vol.2003
http://www.guippo.com/hokkaido/

19:32:30 | guippo | 14 comments | TrackBacks

20 July

■ ウインアンセム 坂路一杯

 アンセムに関して「脚元がどう」というところに全く触れられていないコメントは初めてのような気がする。それだけ良化具合がいいと判断していいものだろうか。時計が終い1ハロンで先週比1秒詰まり、徐々にだが軌道に乗りつつある感が窺える。このまま、行こう。

 入厩後、今までの近況メールから調教メールに内容が代わり、そのボリュームに溺れてしまいそう。自サイトでの扱い方にも苦慮している今日この頃。何事も情報が溢れきっている現代なだけに余計な言葉は省いて要所を押さえるコメントをお願いしたいところだが。これはこれでサービス精神旺盛とクラブのプラス条件にも採れるのかな。


※ 下記はウインレーシングクラブ発信の近況情報です。転載を禁止します。

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ウインアンセム

7/20(水)
美浦坂路良 68.0〜50.5〜34.5〜17.0 (6) 楽走
美浦坂路良 54.2〜38.4〜25.0〜12.5 (5) 一杯追う
内3歳500万下トレノラピド馬なりの外、1秒6先着。

 今朝の美浦TCの馬場開場時間、午前5時の気温は20度。関東では一昨日の18日に梅雨明けとなり、連日、連夜、厳しい暑さが続いています。
 幸い、今朝は湿度が低かったので、暑いことには変わりないものの、いくらか過ごしやすい陽気となりました。馬場状態は、Wコースが「稍重」となった以外、坂路を含むその他のコースは「良」となっています。
 今朝のウインアンセムは、坂路で併せ馬での追い切りをかけられました。
 まずは、矢崎調教助手が手綱を持って、厩舎周りの引き運動へと出発。じっくりと時間をかけて体をほぐしたところで、坂路へ移動です。その坂路で、手綱を塚田騎手にバトンタッチすると、8時25分に追い切り前のウォーミングアップの1本目をスタート。時計は、17秒5→16秒0→17秒5→17秒0の4F68秒0で、ほぼ17秒ペースを守っての楽走ゴールでした。
 この1本目で追い切りのウォーミングアップを済ませると、再びスタート地点に戻り、パートナーとなった3歳500万下のトレノラピドと合流。そして、14分後の8時39分に追い切りをスタートしました。先行はトレノで、それに3馬身遅れてアンセムが続きます。最初から気合いを入れられているアンセムは、通過ラップが15秒8→13秒4→12秒5→12秒5と、グングン坂を昇っていきます。ラスト1ハロンで脚色が衰えてしまったトレノを捕らえると一気に抜きにかかり、1秒6の差をつけての先着。全体の時計は、4F54秒2となっています。
 騎乗した塚田騎手は、「多少ビビっていたところがありましたが、動きとしてマズマズでした」と、乗った感触を坂本取材局長に報告していました。
 矢崎助手からも「塚田君がビッシリやってくれたし、時計も先週よりは詰めています。ひと追い毎に動きは良くなっていますね」と、なかなかの評価をもらっています。
 しかし、「ただ、カイバを食わし込んでいるせいで元気も良くなっているんですよ。ちょっと煩いくらい」と、困り顔もチラリ覗かせていました。

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グイッポオーナーズクラブ
http://www.guippo.com/GOC/

19:33:49 | guippo | 111 comments | TrackBacks